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平成30年度全国学力・学習状況調査分析:転機迎えた全国学力・学習状況調査 A・B一体化問題、初の英語導入



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平成30年全国学力・学習状況調査と今後の展望
転機迎えた全国学力・学習状況調査


A・B一体化問題、初の英語導入

日本教育新聞社寄稿

 平成19(2007)年度から悉皆調査でスタートした全国学力・学習状況調査も本年度実施分で11回を数え、大きな転機を迎えようとしている。これまでの指導改善によって、都道府県による学力の上位と下位の差は、回数を積み重ねる中で、縮小した。それだけ、各学校、自治体などがきめの細かい学力向上策に取り組んできたと言うこともできる。こうした質的変化に加え、31(2019)年度には主に知識を問う「A問題」と、主に活用の力をみる「B問題」の一体化した出題方法へと変わる。また、これまでは、国語、算数・数学が対象教科で、理科だけが24(2012年)年度から3年おきに実施されてきた。来年度からはここに英語(中学校)が加わる。国では身に付ける英語力に中学生の半分がCEFR・A1レベル相当以上を求める。



 

■3年ぶりの理科、生きて働いたか

 これまでの調査結果の公表時期を、今回は早めている。2学期からの指導に生かせないなどとする学校現場の要望に応えたものだ。公表時期は前回の8月28日から、今回は7月31日へとひと月ほど前倒しした。
 調査対象となったのは、国公私立約3万校、小学6年生と中学3年生の計205万人。
 算数・数学、国語に、今回は理科も調査教科になっている。
 上位県と下位県の学力差が縮まる一方で、主に知識を問う「A問題」は比較的正答率が良いが、主に活用が試される「B問題」は課題である点は変わらないままだ。
 3年ぶりに実施した理科では、過去との問題のレベル差が指摘されているものの、平均正答率は向上した。
 ただ、気になる数値が幾つかある。
 「理科の授業で学習したことは、将来、社会に出たときに役に立つと思いますか」との問いに対する児童・生徒の回答率の経年変化を見ると、役立つと積極的に肯定した割合が、小学校では43・0%(24〈2012〉年度)→44・5%(27〈2015〉年度)→40・0%(30〈2018〉年度)と、今回減少に転じた。
 同じく中学校は21・0%(24〈2012〉年度)→22・3%(27〈2015〉年度)→22・2%(30〈2018〉年度)と、低い割合のまま推移する。
 理科だけに限らないが、教科指導では社会(世の中)で生きて働く力となるよう改善していくことが目指されてきたはずだ。
 今回も、こうした指導の質が問われた設問がある。
 例えば、今回正答率が37・8%と低かった中学校での台風を科学的に探究する設問なども該当しそうだ。選択肢を選ぶ活用問題である。
 設問では、台風の進路予想図や、台風の周りの風向きなどを図示しながら、自分の部屋にどの方向から風が吹くかを選択してもらう。理科としては、地学的領域での気象現象を扱うことになるが、今夏の台風などによる自然災害を考えれば「将来、社会で役に立つ」どころか、今、日常生活で身を守るための考察力につながる。
 同様に、小学校で正答率20・2%と低かった設問。河川が増水すると、どう土地が変化をするかを考えさせた活用、記述式問題だ。
 理科としては実験結果の考察や、地球に関する問題というカテゴリーになるのだろうが、居住区流域の安全性という視点を加えれば、理科の問題から、自分の問題、地域の課題として捉えることも可能であろう。
 こうした設問に対処していくためには、理科を教科・理科として指導するだけでなく、自分の生活に引き寄せる工夫が求められる。
 また、「将来、理科や科学技術に関係する職業に就きたいと思いますか」に「当てはまらない」という回答は、小学校では46・3%まで増え、中学校では今回48・6%と、経年で5割を挟んで行き来する。
 中・高校から、進路としての理系啓発に力を入れても成果を生みにくい土壌ができている。理科学習への動機付けをどう醸成するか。科学の分野も視野に入れた、小・中学校段階からのキャリア教育の改善も今後の課題である。

 

■課題検証、なお課題

 今回の学力調査では、例えば、過去の調査で正答率が7割を下回る設問が、課題として取り上げられ、再検証の対象になった。
 例えば、小学校国語B。給食の献立について、その良さを推薦する文章を書いてもらう設問も含め、出題した。献立の一つ「かみかみあえ」について、紹介する文章と、おすすめする文章を掲載し、さらに、その文章を書くためにメモしていた「保健室の先生の話から分かったこと」などにある言葉や文を取り上げて、書き出しの「かみかみあえは、」に続けて50字以上80字以内で書くことを求めた。
 設問は「目的や意図に応じ、内容の中心を明確にして、詳しく書くことができるかどうかをみる」もので、学習指導要領における領域・内容は第5学年及び第6学年にある「B 書くこと」「ウ 事実と感想、意見などとを区別するとともに、目的や意図に応じて簡単に書いたり詳しく書いたりすること」である。
 正答の条件を、@むし歯を防ぐ効果について【紹介する文章】と【保健室の先生の話から分かったこと】から「a よくかむこと b だ液がたくさん出て、口の中をきれいに保つこと」を取り上げて書いているA【おすすめする文章】にふさわしい言葉を用いて書いているB書き出しの言葉に続けて50字以上80字以内で書いている―と設定し、調査結果では@ABの条件を満たしていたのが13・5%であった。
 課題が課題として残ったままという結果になった。
 また、小学校と中学校の国語Aでは、慣用句の理解に課題があることから、同一の言葉を出題して定着度などをみた。
 例えば、小学校では本の中に出てきた表現の意味と使い方をカードにしているという設定に「心を打たれる」を取り上げ、その「意味」と「使い方」を四つの選択肢を用意して、答えてもらっている。90・5%が正答している。
 中学校の国語Aでは、伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項として出題。問題の中で、「心を打たれる」の意味を四つの選択肢から一つを選ぶ。また、「心を打たれた」を文末にして一文を書くことを課した。その際の条件は、主語を明らかにして、どのようなことに「心打たれた」かを明確に表すよう求めている。
 結果、意味の選択は94・8%と高率だった。ただ、文章にする課題では、「心を打たれた」の正しい意味を理解して書いていることや、主語が明確、心打たれた内容が明確、どのように心打たれたかが書いてある―の条件を満たしたのは、22・8%にとどまった。
 言葉の意味理解とともに、もう一歩進めて、文例練習なども必要な要素になる。

 

■英語で試される各県の実力

 31(2019)年度に導入する英語は、中学校3年生が対象にした「読む」「書く」「聞く」「話す」の測定。初の英語導入に向けて、予備調査として今年5月試行調査を実施した。読み書きとリスニングは連続して45分間で出題し、スピーキングは、それらとは別に15分間かけた。
 スピーキングの具体的な測定方法は、コンピュータにヘッドホンとマイクが一体となった機器をつなぎ、答えをUSBメモリに録音するオフライン方式を採用した。生徒は、問題に応じて、時計の絵を見て英語で何時か答えたり、15秒間で自分の学校を紹介したりした。
 その後、こうした調査を実施できるかコンピュータ環境などの整備状況を確認するよう要請したが、整備状況が不十分な自治体などがあったため、来年度については特例として、「話すこと」の測定は学校によっては実施しなくてもいいことになった。これに伴い、「話すこと」調査の結果は全国平均を公表し、自治体単位では公表しないなどとしている。
 英語力に関しては、第3期教育振興基本計画などで、中学校卒業段階でCEFR・A1レベル相当以上 ,高等学校卒業段階でCEFR・A2レベル相当以上を達成した中・高校生の割合を5割以上にすることを目標に掲げている。CEFR・A1レベルは初級者レベルで例えば英検3級程度、CEFR・A2レベル相当以上は基礎レベルで例えば英検準2級程度である。
 英語4技能の向上は、「大学入学共通テスト」(新テスト)を含む大学入試改革とも連動しており、新学習指導要領で小学校の3年生から開始する「外国語活動」から、高学年での教科「外国語」、中・高校での英語を話すことを基本とする授業方法の改善など、小学校段階から大学段階と、一貫した英語改革が進められている最中だ。
 全国学力・学習状況調査導入当初のように、都道府県ごとの数値のみの実力が一人歩きするおそれもある。

 

■知識・活用一体化の意図は

  31(2019)年度の全国学力・学習状況調査では、「A問題」「B問題」として長く親しまれてきた出題形式から「知識」「活用」を一体化した問題の出題形式へと変わる。これに伴い、調査時間を国語、算数・数学ともに5分伸ばすという。
 全国学力・学習状況調査について検討している文科省の専門家会議は知識と活用の問題区分について「A問題を通じて学力の底上げが図られた」などと役割を評価する一方、新学習指導要領では、知識と思考力などが「相互に関係し合いながら育成されるという考え方に立っている」として問題の一体化を提言した。
 すでにサンプル問題も登場した。
 例えば、小学校の算数で公表されたのは「トマト7個の代金が最も安くなる買い方を書きましょう。また、その時のトマト7個の代金を書きましょう」という問題。2年前の調査では選択式で出された「単位量あたりの大きさ」に関する問題の記述式版。問題文中に児童同士の会話を追加し、それをヒントに考える内容にした。
 サンプル問題の出題の意図について「『主体的・対話的で深い学び』を意識し、会話場面や思考場面を設定した」などと説明。また、「『粘り強く学習に取り組む態度』を意識して選択式問題ではなく、試行錯誤しながら最適解を見つけ出す問題とした」ともしている。
 中学校の国語では昨年度出題した太宰治の「走れメロス」を題材にしたサンプル問題を公表。作品中から好きな表現を紹介し、理由とともに説明することを求めている。
 過去の調査結果から「伝えたい内容や自分の考えについて根拠を明確にして書く」ことに課題が見られたことから、今回の問題例として取り上げたという。

 

■変化への対応は求められるが

 開始から10年を経た段階で、文科省は「適切な取組の推進」(通知、平成28年4月218日)を発出している。
 「4月前後になると、例えば、調査実施前に授業時間を使って集中的に過去の調査問題を練習させ、本来実施すべき学習が十分に実施できないなどといった声が一部から寄せられるといった状況が生じています」と懸念し「仮に数値データの上昇のみを目的にしているととられかねないような行き過ぎた取扱いがあれば、それは本調査の趣旨・目的を損なうものであると考えております」と注意を促した。
 「知識」「活用」の一体化した問題への変更、初の英語の導入・実施と、その変化への対応は、余儀なくされることだろう。第12回の全国学力・学習状況調査は来年4月18日に実施予定だ。