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■Vol.04 町田市立南成瀬小学校 村林正章先生・井上陽子先生のスパイス(2)

「生きる力」を培う少人数指導
(聞き手:当機構事務局 齊藤、加藤)

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  個に応じたアプローチを

- 子ども同士の学び合いや「考える力」の育成に力点を置いた時、少人数指導における(先生の)助言の按配が難しいですね。その、さじ加減のあたりをお話いただけますか?

インタビューの様子井上  そうですね。難しいですね。3年は3年なり、6年は6年なりの教師の出方があるんですね。やはり、得意不得意があって、私は3、4年の出方の方が好きなんです。ところが村林先生は高学年の支援の方が得意だっておっしゃるんですよ。そこでお互い話しをして、お互いが学んで行く。

村林  既習事項を活用してとなると、高学年の方が既習事項が多いんです。だから、多様な考えを引き出すには、高学年の方がやりやすい、っていう単純な理由です。3年生くらいだと既習事項が多くないですから多様な考えを引き出すのが、ちょっと難しくて、申し訳ないですけど、3年生くらいが苦手なんですよ。

井上  3年生は生活の中から引き出すんです。子どもの遊びとか、普段の生活とか、子どもを見た様子など、いろんな子どもと廊下などで話をしてますから、そういうところから引っ張ってきて算数と結び付けるんです。

- 身近なところから、こういうことってあるよね、って・・・

井上  そうです、そうです。だから小数にしても、長さの方から入っていった方がわかりやすい子もいるだろうし、かさが好きでかさばかり操作している子は、かさから入った方がわかりやすいだろと思います。だから小数を学習するときは、導入の方法を2つに分けて、子どもが考えやすいとこからやっていったら、きっと理解が早いだろう…。子どもも算数を好きになるし、一生懸命考えるし、ということを考えています。

村林  子どもたちがいろんな考えを出してくれると、授業はすごく盛り上がるんですが、時数が気になる面もあるんですよ。算数の授業ばかりをたくさん取れるわけではないですから。子どもが反応良くていろいろと出してくれると、1単位時間内に終わらないんです。指導書で1時間と書いてあるところが、2時間、時には子どもたちの反応が良すぎて3時間ぐらい掛かることがあるんです。そうすると、計算の技能や反復して身につけさせることが、なかなか学校では充分に取り組めない。どちらかというと、考えさせるところを重視しちゃうんです。それは集団じゃないと力をつけられない。ドリル的な計算などは家でも出来ます。一人でも出来ます。でも学び合いっていうのは、学校でなければ出来ない。学校では、どうしてもそちらの時間を重視してしまうものですから、なかなか技能を定着させる時間を作れないというのが、我々の長期にわたる課題ですね。

井上  ですから、私たちは筑波に行かせていただいて、附属小学校の子どもたちに計算をどうやって練習して習熟させているのかを学ばせていただいております。わり算の中で新しい決まりを見つけていく。子どもは一生懸命わり算していますよね。あぁやっていったら、わり算練習してごらんというより、よほど効果があがるんだろうな、と思いますね。短い時間でやる気が出てくるし。そういうのを学んで来て、多少やっています。それから数字のカードですね。カードを使いながら、私も始めたところなんです。
 

結果をデータで確認

インタビューの様子井上  「考える力」については、伸びてきたなという手ごたえを感じています。事実、かなり伸びてきています。東京都の学力検査にしても、「考える力」だけは平均より少し高かったんです。最近見ていますと、国際比較が出てきたりしていますよね。それで、私たちも(きちんと測って)データというきちっとしたもので見てみたらどうかしらと思いました。私たちがやってきた実践が本当に良かったのかどうかを、東京大学の先生から名古屋大学心理学部の藤村宣之先生(注1)がその分野ではご専門という事でご紹介いただき、考える力を測れる特別な問題を作っていただいて、学年の最初と最後に実施しまして、そして結果を出してもらったんですが、こちらの手ごたえと同様に伸びていました。図を書いて、絵を描いて、式を書いて、答えを出している、と。それから考えられない子どもがいない、ゼロだと。加えて他校との比較もしていただきました。やはり他校と比較しても上がっているという結果をいただきました。

村林  何も書けない子が、本校の場合は非常に少なかったんです。

- 問題解決能力がある。どうにかしてやってみようと言う気持ちが高い、ということですね。

井上  そうですね。今まで実践したことをビデオに撮り、(分析していただいたりしていましたが)東京大学の基礎学力開発センター、市川伸一先生(注2)にコンパス検査をやっていただいたんです。本校は、佐藤学先生(注3)や秋田喜代美先生(注4)、恒吉僚子先生(注5)のグループと連携合同校になっています。秋田先生に藤村先生をご紹介いただき直接お会いしまして、調査をお願いすることになりました。名古屋大学藤村先生の検査をしていただきましたが、ともに「考える力」は伸びている。市川伸一先生のコンパス検査でも伸びてる、という結果をいただいてほっとしています。これからもこの方針で進んで行こうかな、思っているところです。

 

算数で「生きる力」を

村林  少人数指導のあり方で、だいたい集約されてきたのが、いろんな見通しを持つ子を1つのグループに入れようということです。同じ見通しを持った子だけでグループを作るのではなく、Aの見通し、Bの見通し、Cの見通しを持った子をそれぞれに4グループに分けて、いろんな見通しを持った子を1つのグループに集める。その中でいろいろな考え方の子同士で自分の考えを話し合う。そうすると、子どもが子どもに質問する。「その考えはおかしいんじゃないの?」と言えば「こう考えればいいんだよ」と誰かが説明する。また別の子が「こういう考え方も出来るよ」と言ったりと、子どものやり取りが出来るようになってきていますね。

 そして単元の終わりの方で問題練習をするときは、それまでの定着度に合わせてグループを変える、と。1つの単元内で、最初はいろんな考え方を子どもたちが共通に体験できるようにするグループ。最後は、定着度別的なグループ構成をする。だいたいそういうパターンになって来ています。単元によって多少違いますけどね。

井上  大切なのは、最初の分け方を多少工夫して、子どもに寄り添った形でつくっているということですね。ただ単純に、あの子は発言するからこっち、この子は発言しないからこっちと、そういうのではなくって、子どもに自己選択させます。あらかじめ課題を見せておいたり、説明しておいたりしたあとに、子どもが自己選択する。そして子どもたちは分かれて、グループで子どもたち同士が学び合いをしながら予習を進めていくんです。

- いろいろと試行錯誤されたことがわかります。

井上  失敗もしたし、成功もしたし。

- 私たちもいろんな先生方と接触を持つようになって、少人数制の授業の在り方というのが課題になっていることを実感しています。他から何か問い合わせがあったり、他の場所で聞かれた時に、お聞かせいただいたことを伝えていって構いませんか?

村林
  はい、我々もお互いによその学校との学び合いです。

井上  他校にも発信しに行っていますし、「なんなる算数だより」というものを作りまして、他校にも発信しています。

村林  また平成14年には、少人数指導の研究内容を「主体性に取り組む子どもの育成」とう冊子にして発表しました。まだ少人数という言葉が真新しかった頃で、どうやるんだろうという時期に発表したものですから、それこそ北海道から九州までの全国から反応がありましたね。

井上  結局、社会に出まして企業で働いたり仕事をしたりしますよね。その中では、既製にないものを作り出していかなくてはならないことがあります。そうした力を養うために、算数で子どもをどう育てて行ったらいいのかと考えた時に、算数の考える力を伸ばすというのと繋がるかなと思いました。習ったことを使っただけで、世の中で仕事が出来るわけではないです。

 新聞をめくると“リストラ”という言葉が出てきますよね。リストラ、リストラ、と。でもこの学校の子たちは、答えはひとつではない。ひとつの問題でも、解き方はいっぱいあって、いろんな考え方を4つも5つも見つけてきました。その中で自分にいい方法を見つければいい。1つが駄目であっても、他のやり方があるんだということをきっとわかってくれるんじゃないかなと思います。この算数のやり方を教えていけば、社会に出てわからないことがあっても、自分で習ったことを思い出し、聞いたことを思い出し、絶対にやっていけるんじゃないかなと勝手な想像までしちゃってます。


- まさに「生きる力」ですね。

井上  そう、それに子どもたちは何回もこれを繰り返していますから、自然と自分の力になっているし、知識になっているだろうと思うんですよね。

- 算数で培った力が、教科に関わらずその後の生徒さんの生き方に大きく関わっているんですね。小学校を卒業した後の成長が気になりますが…。

井上  そうですね。今後は地域の中学、高校とも連携をとり、小学校で培ったものがその後の成長にどのような影響を与えているのかも見ていきたいと感じています。

 

少人数指導にあたられている全国の先生方へ

- いま、現場で授業の進め方や少人数指導に不安を感じていらっしゃる先生方へ、何かひと言お願いします。

インタビューの様子村林  「失敗を恐れない」ということでしょうかね。失敗しても、そこからまたたくさん学べます。すると次への一歩やヒントがそこからもらえます。やらなければ何のヒントも得られないし、ただ頭の中で考えているだけではどう仕様もないのかなと・・・。 誰もやったことのない少人数指導でも、こうやって体験をしていく中でかたちになっていったわけですから。これはいいなと思ったら自信を持ってやってみることですね。いろいろと考えて、よしこれだ!と思ってやってみても、やってみたら「あぁうまくいかなかったな」ということも確かにあるし、あまり考えずにすっとやってみたら、すごくうまくいっちゃったということもあります。だから、考えすぎずにとにかくやってみる。すると子どもが反応を示してくれるので、そこからまた学んでいけばいいのかな、と思います。

井上  やはり研究授業を進んでやってみるといいでしょうね。研究授業をするたびに、自分がひと回りあがって、成長していくと思いますね。よその方からの評価を受けますし、自分もそれで一生懸命になってやりますから・・・。それから、他の小学校、犬山市の小学校ですとかに行って授業を見せていただきます。そして自分の学校に帰ってきて良かったと感じた部分は取り入れてみる。

子どもと一緒に授業を楽しんでいくこと、これは絶対に大切なんじゃないでしょうかね。

- 本日は、少人数指導を進めるにあたって、大変参考となるお話しをお聞かせいただきました。本当にありがとうございました。

*取材にあたって、同校の南部校長先生に全面的にご協力いただきました。この場を借りまして御礼申し上げます。

2006年6月23日 町田市立南成瀬小学校 少人数指導教室「なんなる算数ルーム」にて

参考資料:「なんなる算数だより」(PDF) 「なんなる算数だより」(PDF)

注1:
 藤村宣之(ふじむら・のぶゆき) 名古屋大学 大学院教育発達科学研究科 心理学発達科学 助教授
注2:
 佐藤学(さとう・まなぶ)    東京大学 大学院教育研究科 教育心理学 教授
注3:
 市川伸一(いちかわ・しんいち) 東京大学 大学院教育研究科 学校教育開発学 教授
注4:
 秋田喜代美(あきた・きよみ)  東京大学 大学院教育研究科 学校教育開発学 教授
注5:
 恒吉僚子(つねよし・りょうこ) 東京大学 大学院教育研究科 比較教育社会学 助教授

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