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 今回は、東京町田市にある南成瀬小学校を取材させていただきました。同校では、「主体的に取り組む子どもの育成」を研究主題に決め、「考える力」を育てることを主眼にした算数科における少人数指導の研究を進めています。習熟度別を主体にした少人数指導が多い中、同校が採ったそのスタイルは、子ども同士の「学び合い」を大切にした一斉指導の在り方に近いものでした。同校の少人数指導は、今年で6年になり数多くの成果をだされています。その秘訣を具体的にお話しいただきました。

 
 町田市立南成瀬小学校
 平成13年度より「少人数学習集団による指導法の研究」を推進。
 平成17・18年度 町田市研究推進校
  東京大学大学院 基礎学力研究開発センター 連携ボード校
Profile
  井上陽子(いのうえ ようこ)   町田市立南成瀬小学校
井上陽子先生 近影
1948年 東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。渋谷区立広尾小学校教諭から始まり、現在東京都町田市立南成瀬小学校主幹。3年生から6年生までの少人数算数を担当して6年目になる。子どもたちが自分で操作活動をしたり、友達と一緒に多様な方法で考えたりすることを大事にしながら、算数の学習を進めている。
  村林正章(むらばやし まさあき)   町田市立南成瀬小学校
中村潤一郎先生 近影
1949年 東京生まれ。玉川大学通信教育部で小学校教員免許を取得。引きこもり、フリーター等を経て、30歳にして教員生活に仲間入り。現在東京都町田市立南成瀬小学校にて少人数算数を担当。習っていないことでも「既習事項や生活経験を生かして考え、自分で解決できる子」に育てたいと考えている。

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■Vol.04 町田市立南成瀬小学校 村林正章先生・井上陽子先生のスパイス(1)

「豊かな人間関係」に根ざした少人数指導の在り方
(聞き手:当機構事務局 齊藤、加藤)

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   今日は東京都町田市の南成瀬小学校にお邪魔しております。こちらの学校では、研究校として学校全体で少人数指導に取り組んでいらっしゃると伺いました。算数授業の少人数制では、多くの成果をあげられているとお聞きしています。今回はその秘訣を、実際に少人数指導をご担当されている村林先生と井上先生のご両名にお聞かせいただければと思います。
  少人数指導をスタートするにあたって

インタビューの様子 村林   平成13年度より本校では少人数指導を始めています。平成13年度当時、『少人数指導』という言葉が初めて現場に出てきて、先行研究などは全くありませんでした。ですから、「少人数授業って何だろう?」という所から本校の研究はスタートしました。まさに暗中模索で、なんとか今年で6年目を迎えているという状況です。

 本校では、少人数指導に最初に取り組む時に、職員全員で少人数指導のイメージを出し合ってみました。そのとき出てきたのは、事前にチェックテストみたいなものをして、そのテストの出来具合で子どもたちを分けていくのかなぁとか、他にはどんな少人数指導があるんだろうとか意見が出てきました。我々職員間でも、いわゆる習熟度別指導をするのが少人数指導なのかな、という捉え方を最初は何気なくしていました。

 しかし、年度末に教育課程の評価の反省をした時、本校の子どもたちの実態として、指示待ちで指示されないと動けない、自主性が育てられていないんじゃないかという反省がありました。そしてまた、先生や大人に対しては上手な人間関係を作れるんですが、子ども達同士となるとうまく友達関係を作れない、という子どもたちが目に付き始めたんです。そんな子どもたちを現実に目の当たりにした時、学校としてはクラスの壁を取り払い、学年の壁を取り払い、いろんな形の豊かな人間関係の中で子どもたちを育てていくことがより大切なんじゃないか、ということが職員の中で合意されました。

  そうしますと、先程の少人数指導というのが、習熟度別指導、つまり成績で子どもたちを分けちゃってそのまま指導をしていくことが、豊かな人間関係の中で子どもたちを育てていこうという本校の主旨と合うだろうか、と疑問に感じました。矛盾といいますか、合わないんじゃないかなと…。それと、子どもたちの人間関係が、算数の得意な子は得意な子でまとまり、苦手な子は苦手な子でまとまる。得意な子は苦手な子をバカにするような雰囲気ができ、苦手な子は「どうせ自分たちはできないよ」という人間関係が築かれて行ったら、返って子どもたちが学校を嫌いになるのではないかと考えました。そこで、得意な子、苦手な子が共存しながら進められる少人数制でなければ、豊かな人間性は培えないだろう、ということになったんです。そしてどの子にも基礎・基本をしっかりと定着させたい。定着が充分にできている子には、なお一層の力をのばしてあげたいとも考えました。そういうことを前提に紆余曲折しながら、少人数指導の形態を模索し、やっと現在のかたちに至りました。学級の枠を超えて、弾力的で流動的な学習集団で行こうと考え、担任一人が学級全員を指導するのではなく、算数専任として加配された2名と担任が、3学級101名の指導にあたりました。教室も、そのために算数の特設教室(なんなる算数ルーム)を作りましたよ。5人の教師が相談し、協力しながら効果的な指導を探っています。
 

教員同士が学び合う

- そうした過程で、ご苦労されたことはございましたか?

村林  そうですね…、それまでの算数の授業というとクラス単位が前提です。時計や巻尺などの教具も、ひとクラスの人数分しかないんです。ところが本校は学年一斉にやるから、学年の児童数分ないと駄目なんです。予算的にも学年の人数分買い揃えることは難しい…。だからよその学校に借りに行きました。単元の時期をわざとずらしてね。市内の学校は同じ教科書を使っているわけだから、どこも同じような進度でやっています。同じような時期に貸して欲しいと言っても無理ですから、相手の学校が終わった頃にその単元に入り、巻尺などの教具を借りてきました。そのように、子どもたち一人に一つずつ教具が渡るように工夫しました。

- 普通のクラス単位の指導ですと、担任の先生がある程度単元を前後される場合もありますが、学年全体で単元の進度をそろえなくてはならないとなると大変ですね。

村林  そうです。1時間1時間の進度をピチッと揃えていかなくてはいけないんです。私のようにすぐに話を脱線、なんてことは、もう出来ないんです。

井上  速度は一緒ですね。子どもによってどうしても多少ずれますけれども、ある程度は揃えます。スピード違反は駄目よ、とね。結局揃えています。

- 先生方は個々に経験年数も進め方も違うわけですから、どちらの先生も同じ手法をとっていくという事は、今まで経験を多少崩しながら作り上げていくという作業が必要になりますよね。

井上  そうなんです。

村林
  我々自身の人間関係がもろに出ます。はっきり言って。

井上
  だから、気持ちを一つに揃え、お互いの良さを生かして…。1+1が2になるような形ですね。教員同士が学び合いをしながら登っていかないと、難しいですね。


村林
  最初少人数指導に加配された4人がたまたま同じような算数の授業観を持っていたんです。

村林
  私たちふたりは元々この学校にいて、他の学校からいらした2人の先生方と4人で少人数担当として発足したんです。その4人の授業観が同じようなものを持っていたんで、うまく行ったんじゃないかと思います。

井上
  そうねぇ。


村林
  我々公立の教員は、異動があってしょっちゅう変わりますから…。授業観そのものが同じにならないと、やはり成果は上がらないですねぇ。

- ひとつの方向性で何年間かは継続して行わないと、成果は見えてこないのですね。

井上  そうでないと子どもに力がつかないんです。だからずっと同じ方針ですね。そのために、担任の先生との話し合いの時間は結構とります。そうやって授業観を揃えていかないと授業ができあがらないですね。すり合わせをしていく所はあります。

- 生徒さんたちの豊かな人間関係とともに、先生方の人間関係も・・・・・・

井上  そうです、そうです。私たちも学び合いです。社会に出たらチームで仕事をすることも多いですから、算数で子どもたちにもそういう力を付けていかなきゃねとよく話し合いますね。それが基本かしら。

村林
  職員室で時間があると「今日はここがうまく行かなかったな。そっちはどうだった?」「いや、こっちは子どもがこんな感じだったよ」とか。

井上
  そういう話は、やっぱり出ますよね。


村林
  お互いフランクにね。

 

少人数指導の具体的なかたち

インタビューの様子井上  6月30日に今年度第1回目の研究授業が3年生であるんです。3年生は現在101名・3クラスです。担任に加えて私たち2人が入り、5グループに分けて、5人で授業をするんです。普段の授業も同じように、5分割で5人の教師で進めています。今回は3年生が初めてわり算を習う場面です。どんな風にやっていったら一番力がつくかな、と考えながら授業作りをします。子どもたちっていろんな生活経験をしています。今までしてきた経験はみんな違うわけですよ。既習のかけ算をよくわかっている子もいれば、わかってない子もいます。家族が非常に多くて、何人かで分けるということを日常の中でやっている子もいれば、そんな経験があまりない子も…。けれども教室で給食などを「これ3人で分けて」と言うと、上手に分けることができる子もいます。今までの経験を踏まえた上で、そこからわり算のグループ分けをしてみようかな、と考えてみたんです。

  形態も5つに分かれます。等分除から入るグループが2つ。1つは個数、1つはテープを左右に結ぶ時に半分にする。そこから等分を考えられる子がいるよね、ということで等分除が2つ。包含除のグループが2つ。もう1つは玉などを並べて、その問題作りから入って、等分除の問題を作ったり包含除の問題を作ったりする。そんなグループ分けをしようと考えました。そして、2時間ぐらい学習したあとに、「わり算絵本」を作るんです。その絵本問題でグループ作りをしますので、3時間目に絵本を書かせるように計画しています。4時間目には、子どもたちが作った絵本を持ち寄り、その問題を使って勉強させてみます。その絵本を事前に私たちが見まして、4時間目に、等分除・包含除から入ったそれぞれのグループの子が混ざるようにしてひとグループ作るんです。よく私たちは「学び合いを大事にしたグループ」って言うんですけれども、包含除を習った子は、習ってきた包含除のことを得意になって説明してくれるし、等分除の子は習ってきた等分除のことを説明してくれる。お互いに子ども同士が学び合っていく中で私たちも教えます。そうすると等分除、包含除がともに学べるんじゃないかな、と思っています。

 子どもは自分の興味あることに関してはずっとやって来ていますから、そこまでは順調に行くんですね。ところが抜けてしまうのが、わり算の演習なんです。わり算の意味理解は出来てきた。概念理解は出来た。ところが、実は演習してみるとやっぱり弱い面があることがわかります。そこで次の2時間くらいは、定着度別(これがいわゆる習熟的なものですが)のグループにします。グループ分けには、チェックテストのようなものをいたします。本人がわかっているかわかっていないか、自分の目で見てわかるようにする。これは10分程度のものです。その結果を見ながら、3年生でも自分で判断させようと思っているんです。「わり算がよくわかっちゃった、だから速く進んでも大丈夫!」というグループ。「わからないところ出来ないところがあるかもしれない、じゃぁ、もう一度先生と一緒にやってみようか」というグループ。

  そんな風に3年生を2つに分けてやります。それで2、3時間分けてやると、だいたい全部の子どもの足並みが揃うくらいになりますね。早く出来ちゃった子どもは、伸び止めにしないために復習はさせません。発展課題を与えたり、チャレンジとよく言いますが、パズル的なものを与えたりして勉強していきます。ゆっくりのグループ、先生と一緒に勉強したいなぁ、というグループは、子どものつまずきに応じて、“僕はかけ算の九九でつまずいている”というのであれば、かけ算の九九をもう一回覚えさせてからわり算を練習させよう、わり算のやり方だけがわからないのなら、そこで対応してあげるとか、そんな感じでやっていきます。子どもに応じた指導ですね。その前の段階の絵本作りをした時に、「お隣さんの問題を解いてみて」と言うと、お互いに説明し合ったりするんです。子ども同士で学んでいって、結構わかるようになっていきますね。

 

子どもの学び合いを大切に

- 子どもたちも説明をしていく中で、自分で整理が出来ていくんですね。教えるということは、自分でわかっていないと出来ないことですから…。こういうやり方があるよ、とお友達に伝えるのはとても大事なことなんですね。

井上  その学び合いのグループは、子どもたちは気付いていませんが、多少こちら側で意図したグループを作っています。異なった考え方の子がひとつのグループになりますから、そこでの学び合いっていうのは非常に効果的ですね。

  3年生でも、説明している子どもが言葉に詰まったりすると、別の子が出てきて、「次は、こういうことを考えていたんじゃないの?」って、つけ足して言ってくれる場面が結構出てくるんです。

村林  「代わりに説明できるよ!」と子どもが言い始めるんですね。

井上
  そう、そう。足してくれたり、代わりに言ってくれたりしながら、その子の考えがきちっとしたものになっていくんですよね。本人も「あ、わかった。そうすればよかったのか。ありがとう。」と。その中で友達との楽しさや、勉強する楽しさが出てきて、共に理解していくというのが増えていきますね。自分(教師)がすぐに出て行かないように変えて行っている部分はあるんですけれどもね。


村林
  それが難しいんですよ。子どものことですから、発表していても途中で詰まったりしますよね。そういう時に、その子をバカにするような雰囲気を作らせないように、こちらが配慮しています。また、最後まで答えられないと、「自分は算数が出来ない、駄目だ」と思ってしまう子が中にはいるんです。そういう時は、「途中までしか出来なかったじゃなくて、途中まででも出来たことは素晴らしいね。今の頑張りを続ければ、必ず最後まで言えるようになっていくよ。」という励まし方は必ずするようにしています。

井上
  子どもたちは3年生の時に、そういうやり取りををしながら学習のルールを理解していきます。 6年生にもなると、一人の子が黒板に式で書いていると、「僕も同じような考えなんだけど、それを図で書いて説明できるよ。書いてもいいかな?」と言うようになります。私が当てなくても自然発生的に、友達が式を書き、その横に図を書いて…と足していくんです。間違えても平気だね、という学び合う場面が増えてきましたね。

 

「考える力」を培っていく

インタビューの様子井上  本校では、少人数指導を導入した1年目の時に統計をとったんです。少人数になって子どもたちがどういう思いでいるんだろうと。そうすると、「人数が減ったことで発言できるようになって、すごく嬉しかった。」とか、「一斉授業の時には2回しか発言できなかったけど、少人数になってからは5回もできた」「自分で最後まで説明できた」などの意見が非常に多かったんです。最初は私たち大人も、一斉授業の方がいろんな意見が出てくるから返って子どもが学べるのかな、と思ったりしたんですが、その辺で手ごたえを感じました。それなりに少人数授業の効果が出ていたんです。

 私たち4人は年中話をしていますから、時には私の担当したグループでは出なかった意見を、「友達のグループではこうやった子もいたよ」という形でこちらから出すこともあります。「こう考えた友達もいたけど、これ、どうやったらそうなるのかしらね?」と訊くと、「それはこうしたらいいんじゃない?」って説明してくれたりもします。そのように変化してきましたね。


村林  「考える力を育てる」というテーマで算数に取り組む中で習熟度別は、算数が得意な子たちのグループでは、それこそいろんな考え方を出せて、それなりの効果はあがります。しかし、ちょっと理解のゆったりしたグループなどは、ほとんど子どもたちから考え方が出てこないんですね。そうするとどうしても先生が教えるしかなくなるんです。子どもたち同士で学びあう機会も非常に少なくなって、先生が教えるものを理解して次に進むという傾向になる。真ん中(中間層)のグループも、あまり活発な意見交換は起こらない。全体的に子どもたちのレベルアップをして行こうとすると、いわゆる習熟度的なグループを作って学習をスタートしても、あまり成果があがらない、ということが本校の研究でわかってきたんです。

 ですから、いろんな考え方の子たちをごちゃ混ぜにするんです。最初に子どもに課題を与えて、課題に対して子どもたちは見通しを持ちますよね。Aという見通しを持った子、Bという見通しを持った子、Cという見通しを持った子…。いろんな見通しを持った子がいます。Aの見通しを持った子だけで授業をやったことがあるんですけれども、うまく行きませんでした。同じような発想しか出てこない。うちも相当失敗経験もあるんです。

井上  世の中に出て行くと、いろんな人がいて、いろんな考えがあって、それを聞く耳を持てるかなぁ、なんていう想いもありますね。そして、自分の考えも出していって、また別の考えの人、別の考えの人、とあって、人に助けてもらったって、それはありなんだよ、っていう生き方につながって行くのかな。算数でその力をつけてあげて、さらにまた他の教科に広がっていくのかな、って私は考えているんですよね。

Vol.04 村林正章先生・井上陽子先生のスパイス(2)へ続く

 
 

2006年6月23日 町田市立南成瀬小学校 少人数指導教室「なんなる算数ルーム」にて

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