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■Vol.03 千葉県香取市立小見川中央小学校 中村潤一郎先生のスパイス

子どもたちの経験を活かす
(聞き手:当機構事務局 齊藤)

Profile
  中村潤一郎(なかむら じゅんいちろう)  千葉県香取市立小見川中央小学校
中村潤一郎先生 近影
1969年千葉県生まれ。静岡大学教育学部卒業。 千葉県佐原市立佐原小学校、千葉大学大学院教育学研究科修了を経て、現在、千葉県香取市立小見川中央小学校教諭。 算数の授業において、教師から教え伝えられるのをじっと待つ子どもではなく、今、自分のできることを発展させて新たな学習を構成していくような自学自習のできる子どもの育成をめざして、日々、実践研究に取り組んでいる。

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   今回は、利根川に程近い千葉県の香取市立小見川中央小学校を訪問。中村潤一郎先生にご自身の授業観をお聴きしました。人懐こい笑顔と稜々とした口調。子どもたち一人ひとりの経験に照らして授業を進めることの大切さを語っていただきました。 先生冥利につきることは、との質問に「(子どもたちと一緒に過ごす時間が)本当に楽しいんです」の一言がとても印象に残りました。その気持ちが子どもたちに伝わり、授業にも生きてくるのではないか、と感じました。
  授業の導入と練り上げ

- 今回は中村潤一郎先生をご訪問しております。よろしくお願いします。昨年夏の算数授業研究大会で、初めて中村先生のお話を拝聴しました。若くてエネルギッシュな先生だなという印象が残っております。ところで、その研究会の中で「自ら学び、自ら考える」ということを大事にされているとお話されていましたが、その点について、ご自身が授業の中で工夫をされていることなどお聞かせ下さい。

インタビューの様子中村  今現在の算数授業で多いことを考えてみたいと思います。どの先生方も、「自ら学ぶ自ら考えるということが大切だ」、「算数を学ぶ意義を伝えたい」、と思っていると思うんです。もっというと、教師から子どもたちに知識を伝達する授業ではなくて、子どもたちが創造していく授業をすることが大切だといっていると思うんですが、まだまだ教師が考えている想いと違う形で授業が行われている気がします。そのひとつは導入場面です。たとえば2桁×2桁の計算ができることがその時間の目標であるはずなのに、導入から5分、10分した時点で、「じゃぁ、今日は2桁×2桁の計算を考えてみようね、まず自分で考えてごらん」と自力解決の時間をとることが多いです。そして,先生方はその間、教室中を歩いて出来ない子にヒントカードを渡して何とか解決させようとすることが多いと思うんです。しかし私の考えでは、2桁×2桁の計算をしようっていうのは、その時間の目標であるから、その授業の最後に子どもたちが出来ていればいいと思うんです。そう考えると、一番大切にしたい授業の導入部分は、子どもがこれまで経験してきている既習経験とは何か、をまず考えて、それを授業の最初に経験させていくのが大切だと思います。そして,子どもたちが今まで経験してきたことをちょっと膨らませてみたら、実は今日の授業に入っている。それが大切なんじゃないかな、と。まさに子どもたちが自ら考える、まず自分が出来ることから数字を変えてみよう、使える範囲を広げてみようとしていくうちに、新しい学習が出来ている。かけ算の9×9の次に9×10はどうなのかな、じゃぁ10の段はどうなのかなって子どもたちが少し広げることによって、2桁×2桁の計算に入ることが出来ると思うんです。まずは、そういったことから気をつけています。

もうひとつは、授業の自力解決から練り上げの場面です。よく練り上げが大切って言われるんですが、現状は結果だけを話し合うことが随分多いなと思いますね。自力解決の時間に、「では、考えてごらん。出来た子は黒板に出て書いてね」と先生が声を掛けて小さい黒板のようなものを渡し、指名された子はそれを前に出て掲示し,発表する。それで練り上げの時間が終わってしまう。その時間にやっていることは、結果を発表しているだけ。私はこういう風にやったらこうなりました。答えはいくつになりました。いいですか?いいです、と。しかし、考えることを大切にするのであれば、ここは結果の発表ではなくて、途中過程での練り上げを大切にしたいなと思っています。結果ばかりを発表するのではなく過程を発表し合うことで、初歩的な経験を元にやっている子が、もっといい方法があるんだと考えられるようにしたいし、こちらの目標に近いアイデアを使っている子も、他者に向けてヒントを言わせることによって、もう1回自分がやってきたことを振り返ることができると思います。

実際、多くの先生方は考えることが大切だというのは、わかっていると思うんです。でも、まだまだ過程よりも結果のほうに力を置いていることの方が多いと思うので、ここは研究する余地がありますね。まだまだ課題が多いですから。

 

子どもの目線で

- 算数では、答えはひとつですけれどもそこにいく過程を大事にしたい、ということですね。そのためにも、「練り上げ」を「答え合わせ」にしないと…。 「練り上げ」で子どもの発想力や着眼点を大切に扱いたいと思うと、事前に立てた指導案通りに授業が展開しないケースも出てきますね。

インタビューの様子中村  ありますね。大人の目線で教えていこうという授業に陥ることがあるかもしれません。先生方が教材研究をしすぎてそれに縛られて、子どもの声が聞こえなくなる。せっかく子どもがいい反応をしているのに、自分が予想している反応だけを取り上げてしまって、素直な子どもの意見を捨ててしまうという恐れがあるので、そこは注意すべきたと思うんです。子どもの視点でそういう発想が出てきたのであれば、そこで軌道修正をする必要があるし、また、そこが授業で一番楽しいところなんじゃないかな、って私は授業しながら思っています。子どもたちと一緒に考えていき、「あぁなるほど、こんないい考えがあるんだ」と教材研究の時に気付かなかった子どもならではの素直な反応を楽しみ、授業に取り上げていく必要があると思うんです。だからと言って、何でもかんでも取り上げていては授業の骨組みがぐにゃぐにゃなっちゃうというか、授業が子どもの意見で左右されてしまいます。発言した子はついてきますけれども、それ以外の子はなんだか授業があっち行ったりこっち行ったりしているという印象を受けるかもしれません。そこで授業の前に考えることとして、子どもの既習の経験、勉強面もそうだし生活面もそうですけど、それをまず考えた上で、この授業の目標に到達するために不可欠なものは何かということと、有効なものは何かということを自分の中で考えて、授業を行なっていくようにしなくてはいけないな、と思っています。

- 目標からずれずに到達できる範囲での遊びが必要ということでしょうが、その見極めが難しいですね。先生方の経験などから、この子の言いたいことはこうだろうから、目標のところに行けるかな、と取り上げたり、それはもう少し待っててね、という判断ですね。

中村  機械的にやるのではなくて、どうしてそういうやり方にいたるのかっていう過程をみんなで確認していくのが授業のよさであり、そこが練り上げの部分になるんですね。先生方が練り上げが大切だと思ってらっしゃっても、現実の授業の中で実現されているのが少ないのではないかということですね。

- 授業の中で、子どもにゆだねたり子どもからの言葉を待つことが不安であったりすると、どうしても先生が先に立ってしまうことがまだまだ多いということでしょうか。

中村  子どもの目線に立つことが大切なんです。小学校5年生を指導するのであれば、自分が小学校5年生の立場に立ち、今までの経験を使って何が出来るのかを考え、その時間を楽しみながら、教師として目標に向かって子どもたちを導いていくということが必要だと思います。でも目標の方に導こうということばかりを考えてしまうと、教師側から生徒側に、結論はこうなんだ、と引っ張っていく授業になりがちだと思うので、私は子どもたちと楽しみながら、子どもの視点に立って、一緒に考えていきたいな、と思いますね。

 

 

素材を見つける目

- 授業の中で、教材研究は大きな要素かと感じるのですが、この点で特に気に留めていらっしゃることはありますか?

中村  いろんなところに素材があります。算数でしたら、算数の教科書や指導書だけを見て素材を探すだけでなく、もっと身のまわりの生活の中に算数の素材になりそうなものがたくさんありますし、あるいは中学校・高等学校の教科書を見なおしてみると、それを小学校に当てはめたら面白いな、と思う素材があるんですね。ただ、中学・高校の内容ですと、なぜそうなるのか、というところまでは小学生は説明出来ないと思うんですが、素材という面では面白いものがあると思うんです。どう授業をするかというのは、やはり小学校と中学校では違うので、あくまでそこで利用するのは素材であって小学校の目標に合わせて使っていくことはできるでしょう。

- 生活の中に常にアンテナを張る力を持って、素通りせずにそれに気付く視点を磨くことが大切ですね。先生方はお忙しいですし、精神的余裕を持つのも難しいと思うんですが・・・。

中村  絵が好きな先生は美術館に足を運ぶ先生もいらっしゃると思うんです。図工の教科書に載っていることだけじゃなくて、そういう所から面白いなと思う題材を持ってくることも出来るでしょうし、国語でしたら、自分が趣味で読んでいる本の中から、子どもたちに伝えたいものを持ってくることも出来ると思うんです。なにも教科書ばかりで教材研究をしなくてもいいんです。我々の仕事は本当に忙しくて、時間はあってないようなものですが、算数でしたらまず、先生方が考えることを楽しむということが日々の生活の中で味わうことが必要ですね。先生自身が固まっていては、子どもたちに考えろ、考えることは楽しいよ、と言っても実感として子どもたちに伝わっていかないですよね。

 

教師の個性を生かす

- 無理をしなくても先生方の興味のある部分、自分の好きな部分から対応ができないかな、授業の中で応用が出来るんじゃないか、などと考えると気持ちが楽になりますね。

中村   小学校の教員は全教科担当しますから、まじめで一生懸命な先生の中には全部出来なくてはいけないって固く考えてしまうこともあると思うんです。でもそれは無理な部分も、難しいこともあるので、自分が得意なことや興味のあること、得意な教科を通して、子どもと人間としてのふれあいをしていくと考えるといいと思うんですね。先生の出来る範囲と内容で、他の先生とは違う先生自身の個性を通じて、子どもも成長していければいい。その方が、教師自身も楽しいと思いますね。

- 保護者の方にもそこをご理解いただいて、先生のそういう味のあるところが伝わって、最後にこの1年が良かった、と広い心を持っていただいたら、いいですね。

中村   すぐに結果や答えを求めるということをしないで、途中過程を大事にしていきたいと思うんです。先日も保護者会でお話ししたのは、すぐに、こういうことが出来る、出来ない、という結果を求めるのではなくて、結果に至るまでの過程を、そして、子どもが考える姿を、ぜひ見守ってくださいとお願いしたんです。小学校でしたら6年間でどう成長して、どう変わっていくかを是非見守って欲しいですね。

 

先生を楽しむ

- 最後になりますが、先生をされていて、先生冥利に尽きるなと思う点はどんなことでしょう。

インタビューの様子中村  人間と人間が正面からぶつかり合い、そして子どもたちの成長を見ることができる。人間と人間とが本気で付き合えるのは、他の仕事とは違う教師のやりがいであり、嬉しいことです。それを忘れて、先生は教えるのが仕事だ、となってしまっては違ってきちゃうと思います。本当に私は楽しいんです。子どもたちが帰った後も子どもたちに関わる仕事や教員の間の仕事があるんですが、子どもに返る仕事や日中の子どもと一緒にいる時間は、本当に楽しいな、と思っています。

- 先日オリンピックの金メダリストであるスケートの荒川静香選手もおっしゃっていました。「やらなきゃ、という気持ちだけでは続かない。楽しめる気持ちがないと、長くは続かないです。」と…。先生方の場合は、子どもと触れる時間を楽しみながら、ということでしょうか。先生の言葉には励まされます。今日はどうもありがとうございました。

 

2006年4月13日 香取市立小見川中央小学校 校長室にて

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