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平成29年度全国学力・学習状況調査分析:「主体的・対話的で深い学び」で課題は克服できるのか



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平成29年度全国学力・学習状況調査分析:「主体的・対話的で深い学び」で課題は克服できるのか

全国学力・学習状況調査の先にあるもの
「主体的・対話的で深い学び」で課題は克服できるか

 平成29年度全国学力・学習状況調査の結果が8月28日に公表された。東日本大震災が発生した23年度は、その影響を考慮して調査を実施しなかった。そのため、今回の調査でちょうど10回を終えたことになる。本年度は国公私立の小学校1万9645校、約101万2600人、中学校1万467校、約102万4200人が参加した。結果の公表の仕方に変更があった。一つは都道府県別の平均正答率を整数値にしたこと、もう一つは政令指定都市別の結果を新たに公表するようになったことである。また、調査結果を踏まえての指導改善を効果的に行えるよう提供日を来年度から7月中・下旬に、公表日を7月末に早めたい考えだ。これに伴い、調査実施日も来年度は4月18日を予定する。



 

■上位県・下位県の差が縮小

 調査結果からは都道府県別の上位県・下位県の差が縮小してきたと受け止められている。
 小学校をみると、国語A問題は平均正答率の全国平均75%に対して、秋田が80%、青森79%、石川79%、富山、福井が各78%と続く。一方、平均正答率の低いところをみれば、大阪72%、神奈川、愛知、滋賀、長崎、沖縄が各73%といったところ。極端な差があるわけではない。
 初の調査実施後、10回という回数を重ねる中で、調査結果の全国上位、全国平均以下など順位をめぐり、さまざまな動きがあった。
 例えば、下位県から上位県への教員派遣や相互交流、それぞれの県内での学力向上策の強化、県によっては全国平均よりも点数の上だった学校の校長名を公表するなど、それぞれの自治体内の学校現場に少なからぬ影響を与えてきたと言ってよいだろう。
 全体としての学力の底上げが実を結んできたといわれ、一部の設問の平均正答率の低さには疑問が残るものの、基礎・基本的な知識の定着を問う、いわゆる「A問題」の平均正答率も良好というのが大方の見方である。

 

■課題解消せぬ「B問題」

 その一方で、定着した基礎知識の活用、応用する力を問う「B問題」は依然、課題のままだ。
 小学校の平均正答率の全国平均をみても、国語は「A問題」が75%に対し、「B問題」は58%、算数は「A問題」が79%に対し、「B問題」は46%と差は大きい。
 同様に、中学校では国語は「A問題」が78%に対し、「B問題」は73%、数学は「A問題」が65%に対し、「B問題」は49%となっている。
 例えば、「B問題」でも正答率が低かったのは、どんな設問か。
その一つが、小学校国語「B問題」の協力を依頼する文章を書く力が求められた「緑のカーテン作りへの協力のお願い」問題。
 「協力のお願い」文を踏まえて、緑のカーテン作りの経験がある中学生からの「アドバイス」文を読んで、「水やりに協力してくれることを募集します」という内容のお願い文を完成させる問題である。中学生のアドバイスを生かすこと、「協力のお願い」にふさわしい表現で書くこと、「なぜなら」という書き出しを使って30字以上60字以内で書くことを求めた。正答率は33.2%にとどまる。
 学習指導に当たっては、「目的と意図に応じ、必要な内容を整理して書く」力の育成を挙げている。
 算数の「B問題」で出題された「見かけの月の大きさ」問題は正答率が13.5%である。
最も地球に近づいたときの月と、地球から最も離れたときの月の直径は約14%との違いがある。硬貨の一円玉を「最小の満月の直径」(地球から最も離れたときの月)としたときに、「最大の満月の直径」(最も地球に近づいたときの月)は百円玉と五百円玉のどちらに近いかを選ばせ、その理由を言葉や式などで書き表すことを求めた。
 学習指導では「適切な判断のために、基準量・比較量・割合の関係を的確に捉え、判断の理由を数学的に表現するようにする」ことを求める。具体的には「『最小の満月の直径』と『最大の満月の直径』の関係を表す図をかく活動が考えられる」などと示した。
 情報をいかに読み取り、考え、表現するかは小学生だけでなく、中学生も十分とは言えない。
 数学「B問題」の「万華鏡」を使った問題。万華鏡から見える模様を拡大し、二つの四角形の模様がどのように回転すると、重なるかを聞いたものだ。正答率は14.8%と、これも低率である。
 どの点を中心(回転の中心の位置)にして、どのような方向(回転の向き)に、何度(回転角の大きさ)ほど回転したかが具体的に述べることができれば正解だが、前記の三つの条件を含んだ記述が十分にできていない。
 10回を重ねてもなお十分な力が育成できないが、その突破口の一つとして登場しているのが、次期学習指導要領のキーコンセプトになっている「主体的対話的で深い学び」なのだろう。

 

■「深い学び」は実現するか

 今回の学習状況調査のうち、学校調査では、「習得・活用及び探求の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をしましたか」と、「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善に関する状況」を尋ねている。
 小学校では「よく行った」(23.0%)と「どちらかといえば、行った」(68.6%)で、行っているのが9割を超えている。前年度(28年度)は「よく行った」(21.9%)と「どちらかといえば、行った」(68.2%)で、微増した。
 中学校では「よく行った」(22.1%)と「どちらかといえば、行った」(67.7%)で、前年度の「よく行った」(20.4%)と「どちらかといえば、行った」(68.2%)と比べ、こちらも微増傾向にはある。
 こうした指導方法の実施と、平均正答率をクロス集計すると、「よく行った」群、「どちらかといえば、行った」群、「あまり/全く行っていない」群の順番で平均正答率は低下していく。
 同様に、「児童生徒は、授業で、自分の考えがうまく伝わるよう、資料や文章、話の組み立てなどを工夫して、発言や発表を行うことができていると思いますか」を尋ねることで、「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善に関する状況」を重ねている。
 小学校では「その通りだと思う」が5.9%、「どちらかといえば、そう思う」57.4%で、前年度の「その通りだと思う」が5.6%、「どちらかといえば、そう思う」55.9%と、こちらも微増した。
 中学校でも「その通りだと思う」が6.9%、「どちらかといえば、そう思う」55.3%で、前年度の「その通りだと思う」が6.2%、「どちらかといえば、そう思う」54.5%と、同様に微増した。
 平均正答率も肯定群ほど高い傾向にあるのは、前述の質問の傾向と同じである。
 学校側の意識としては、指導方法は改善しているということだろう。次期学習指導要領をめぐっては、アクティブ・ラーニングから「主体的・対話的で深い学び」へと、言葉は変遷したものの、学んだ知識が生きて働く力となる授業改善の必要性は共有されている。「習得・活用及び探求の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をしましたか」という問いに対し、「よく行った」割合が何割に達したときに、「B問題」の課題が改善されるのかを今後、注視したい。

 

■「高大接続改革」を貫くもの

 今回の中学3年生たちが、大学入試センター試験に代えて実施する「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)の第1期生に当たる予定である。
 これまで議論されてきたように共通テストの国語、数学には記述式問題が出題される。それに対応するためには、知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力の育成が求められている。特に、チョーク&トークと揶揄されがちな高校授業に対して「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業改善を促す狙いもある。
 高校の授業改善に際して、小・中学校の授業が参考になるという指摘がある。現状の教育改革では、小学校から高校、あるいは大学教育まで、一貫した「主体的・対話的で深い学び」が求められていくという方向にある。
 先行しているという小・中学校の「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業改善の結果は全国学力・学習状況調査で、高校での「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業改善の結果は共通テストなどで、今後もその真価が問われることになるだろう。
 だが、仮に小・中学校での「習得・活用及び探求の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫」を「よく行った」という回答が8割を超えてなお、現状と同じ課題が突き付けられることになるのなら、「主体的・対話的で深い学び」の趣旨などが十分に伝わらなかったと総括するしかなくなる時が来るだろう。高校でも同様である。
 次期学習指導要領の下での改善が大いに進むことを期待したい。