■「依然として課題」の設問も
教科ごとの平均正答率は小学校が国語Aで70・2%、算数Aで75・3%とともに7割を超えた。だが、いわゆる活用を主としたB問題では、国語Bが65・6%あったものの、算数Bは45・2%と低く、依然として課題となった。
中学校では、国語Aが76・2%、数学Aが65・0%。国語Bが66・2%と6割台に達した。数学Bは42・4%で最も低い。
理科の平均正答率は小学校が61・0%、中学校は53・5%。ちなみに前回調査では小学校が61・1%、中学校が52・1%だった。
前回調査から改善のあった部分もあるが、B問題を中心に、「依然として課題」として指摘される設問も少なくない。各教科で出題した問題から、平均正答率の低かったものを見る。
例えば、小学校・国語A。「新聞のコラムを読む」問題で、コラムの中で筆者が引用している言葉を書き抜く設問の正答率が20・0%と低率だった。誤答傾向を分析し、「『引用』とは、本や文章の一節や文、語句などを引いてくることであると理解すること」を課題視した。国立教育政策研究所では指導改善のポイントに引用したことについて自分の思いや考えを書くことなども指導、目的に応じて引用できるだけでなく、自分の考えで補説したり、説得力を高めるなどの目的意識を持たせる―などを挙げた。
小学校・国語Bでは、インタビューした内容をコメントとして学級新聞にまとめるという設問の正答率が34・9%と低かった。一定の条件を示されてまとめる力などに課題があったことから、地域の人との交流会を設定してインタビューをするなど、学校新聞作りなどの授業アイデアなどを示した。
小学校の算数ではB問題の「基準量、比較量、割合の関係を捉え、基準量を求めることに依然課題がある」と指摘した。具体的には20%増量した洗剤が売られていて、増量後にはその量は480mL。増量前の量を問うたものだ。指導に当たっては、20%増量する前の量を求めるための正しい式を「テープ図」や「数直線」をもとに考えたりするなど「子どもたちにとって考えやすい数で、数量の関係を捉えることが大切」などと指導のポイントを示す。
中学校・国語では、例えばB問題の情報を関連させて読む問題。ウェブページの文章、日本の人口推移を表したグラフ、雑誌の記事の一部を読んで、日本の2020年の社会を予想し文章を書く設問で、資料を二つ選択することや「2020年の日本は、」という文に続けて文章を書くことが条件付けられている。この正答率は23・3%と低率だった。課題に対処するため、複数の本や資料から得た情報を自分と結び付け考えること、自分の考えを深めたり広げたりするために学校図書館やインターネットを利用して主体的に情報を探すことの重要性、必要性を挙げている。
中学校・数学ではB問題の一つが、正答率が12・3%ときわめて低かった。新入生歓迎会での部活動紹介でプロジェクターを使い、スクリーン映像を投影する際、プロジェクターの光源は変えられないため、投影画面面積を変えて映像の明るさを2倍にするにはどうすればよいかという設問。(映像の明るさ)=(プロジェクターの光源の明るさ)÷(投影画面の面積)という式が提示され、解答の選択肢には「投影画面の面積を2倍にする」と「投影画面の面積を1/2倍にする」がある。「光源の明るさを定数とみて、式の形から反比例だと判断できるか?」がポイントになるという。
小学校・理科では、例えば、活用に当たる枠組みの設問で、水の温度と砂糖が水に溶ける量との関係のグラフから、水の温度が下がったときに出てくる砂糖の量を選び、選んだわけを書くものが正答率29・2%と低かった。
5年の「物質・エネルギー」の「物が水に溶ける量は水の温度や量、溶ける物によって違うこと」を基にした粒子に関する問題だ。
グラフを基に考察して全体の傾向を読み取ることを求め、学習指導に際しては、「水温が下がると砂糖の溶ける量が減るという傾向性について、食塩が溶ける量と比較したり、図や文で表現したりする活動が考えられる」としている。
中学校・理科では、同じく活用に当たる枠組みの問題の一つで、物体の凸レンズによる実像がスクリーンに出るとき、凸レンズと物体の距離、凸レンズとスクリーンの距離、像の大きさを一覧表にしたものを使って問いを立てた。「凸レンズと物体の距離が長く」なったときに、凸レンズとスクリーンの距離は長くなるのか短くなるのか、像の大きさは大きくなるのか小さくなるのかを聞いた。
表中の数値の変化について矢印を使って増加傾向にあるのか減少傾向にあるのか、視覚的に表現して、「従属変数が複数ある実験の結果から規則性を見いだすようにするための教師の支援」をしていく指導方法などを例示した。
3年ぶりの理科調査の結果から、改善した部分はあるものの「観察・実験の結果などを整理・分析した上で、解釈・考察し、説明すること」は課題と指摘されている。 |