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平成26年度全国学力状況調査からわかること − 全体の底上げに成果、「活用」力の課題は継続



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平成26年度全国学力状況調査からわかること − 全体の底上げに成果、「活用」力の課題は継続

全体の底上げに成果 「活用」力の課題は継続
―平成26年度全国学力・学習状況調査から

 平成19年度から悉皆調査として始まった「全国学力・学習状況調査」も、平成26年度実施分で、6回目になった。23年度は東日本大震災の影響により、希望校へは問題冊子の配布などをしたものの、調査としての実施は見送った。途中政権交代などもあり、抽出調査や希望利用方式などを採る年度もあったが、本年度については4月、国語、算数・数学の2教科で、小学校第6学年、中学校第3学年の全児童・生徒を対象とした悉皆調査で実施している。
 結果の公表は8月である。本年度の調査結果から文科省はその学力の状況について、特筆すべき2点を挙げた。
 その一つが、各都道府県間の学力格差が縮まったこと。この状況を、各県が一団となってゴールになだれ込んでいるような「団子状態」と評する識者もいる。
 また、もう一つが、これまで都道府県の間で調査結果が下位に低迷していた自治体の一部に飛躍的な成果が表れていることを指摘している。
 例示されている自治体の一つは、沖縄県である。特に、小学校算数のA問題(知識)は、これまで全国平均を下回っていたが、本年度は全国平均を2・8ポイント上回る躍進を見せた。小学校の場合、国語A、国語B(活用)、算数Bは以前、全国平均を下回るものの、全国平均との差は国語Aが0・9ポイント、国語B(活用)が1・0ポイント、算数Bが1・1ポイントと、それぞれわずかにマイナスなだけで、従来からの改善は顕著だった。
 沖縄県ではこの間、この調査で上位を占めている秋田県と教員人事の面で交流をしたり、最近では児童などを直接秋田に来県させ、授業を受けさせたりと積極的な取り組みをしている。
 文科省の調査結果分析では、学校での指導状況として■教員の研修活動の強化自分で調べたことや考えたことを分かりやすく文章に書かせる指導など、指導の改善国語・算数における「補充的な学習」「発展的な学習」の指導の強化―などを指摘しているところだ。
 全国的には全体として学力の底上げが図られ、調査結果の成績が下位に位置した自治体なども学力向上に力を入れた結果、下位と上位の差が縮まってきたという総括である。



 

「基礎・基本」の未定着部分は

 今回の教科に関する調査での全体の平均正答率を見ると、小学校調査で国語Aが73・1%、国語Bが55・6%、算数Aが78・2%、算数Bが58・4%、中学校調査で国語Aが79・8%、国語Bが51・6%、数学Aが67・9%、数学Bが60・5%という結果だった。
 この数字をどう評価すればよいだろうか。
 A問題とは主として「知識」に関する問題を中心に出題され、B問題とは主として「活用」に関する問題を中心に出題しているものである。いわばA問題は基礎・基本で、B問題はその基礎・基本を使って読み解く応用問題である。
 基礎・基本であれば、平均正答率は8割前後が必要ではないか。それを考慮すると、幾つか疑問符が付く教科はあるが、特に、中学校の数学Aの67・9%という平均正答率は十分な数字とは言えまい。
 今回の調査から、数学Aで指摘されている課題部分を見てみる。
 例えば、その一つが「数と式」。「『プールの水の深さは120p以下である』という数量の関係を、プールの水の深さをxpとして不等式で表しなさい。」の正答率は46・0%。
 「図形」では、図形の回転移動について移動前と移動後の2つの図形の辺や角の対応を読み取ることができるかを問うたものは、正答率42・9%。
 「関数」についても課題が残った。運送会社の書類の宅配サービスの料金表を掲げ、「1sまでの書類の重量と料金について、『重量を決めるとそれにともなって料金が1つ決まる』という関係にあります」。「( @ )は( A )の関数である」と表すときに、@とAに入る言葉は何か。この正答率は、36・7%と低い。
 また、今次の学習指導要領に入った「資料の活用」。具体的な指導事項として「相対度数」「中央値」「ヒストグラム」などを設定している。その一つの設問では、0分から60分までの10分刻みの通学時間別に人数を示した度数分布表を使って、30分以上40分未満の階級の相対度数を求めることを出題した。正答率は43・4%。
 設問ごとに、「学習指導に当たって」留意することが示されている。例えば、上記の「相対度数」では、階級の相対度数を求める場合、総度数÷その階級の度数、で答えを導く。「相対度数の必要性と意味について理解を深められるようにするためには、ある階級の度数の総度数に対する割合を求めて、資料の動向を読み取る活動を取り入れることが考えられる」などとした。

 

普段の授業で付ける力大切に

 国際調査として知られるOECD生徒の学習到達度調査(PISA)の2012調査では、数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの3領域でOECD加盟国上位に返り咲いたことから「V字回復」などとも評された。
 全国学力・学習状況調査実施の契機となったのも、もはや世界トップクラスとは言えなくなったと受け止めることになったPISA2003年調査結果にある。
 全国学力・学習状況調査の実施当初から、問題Bの学力をどう培うかが課題視されていたわけだが、依然としてこの課題は残ったままだ。
 今回のB問題調査結果を見ても、前述したとおり、平均正答率は、中学校・数学を除けば、A問題とB問題との平均正答率の開きは、約20ポイント近くある。
 これは、児童・生徒が感じた解答時間の足りなさとも関連する。
 解答に当たって「やや足りなかった」「全く足りなかった」と感じた児童・生徒は、小学校の国語Aで13・9%に対し、国語Bは48・9%いる。算数Aの10・2%に対し、算数Bは23・0%。同様に、中学校では、国語Aの5・9%に対し、国語Bは19・3%。数学Aの8・4%に対し、数学Bは21・5%と差が大きかった。
 正答率の低かった設問を幾つかピックアップしてみる。
 小学校の国語Bでは、討論会での発言に対し、ある立場から「質問」か「意見」を書くという問題。
 6年の学級での「卒業文集はパソコンを使ってつくるか、手書きにするか」をめぐっての討論会の様子を、それぞれの立場の主張、意見で構成する。これを読んで「あなた」自身が、「手書き」の立場から「質問」をするか、あるいは「意見」を述べるという問題である。正答率は28・4%と極めて低い。
 学習指導要領では、言語活動の充実を求めている。人の意見を聞き、理解し、自分の意見を述べることができるというのは、日頃の授業での話し合い場面、学級会活動などでも、意識しておけば付く力ではないだろうか。
 算数Bの正答率30・8%の設問。10リットルの目盛の付いた入れ物に「分ける前」には9リットルのスープが入っている。10人に分けた後は、7リットルにスープは減った。あと30人にスープを分けるときに選択肢として@足りなくなってしまうのかA残さず分けることができるのかB分けることはできるが、残るのか―を示した。設問では、その選択肢を選んだ理由を「言葉と数を使って書きましょう」というもの。正しい選択肢を選んでいても、誤答になる場合もある。誤答例として、残り30人に必要な量のみを書いていて、10人に分けた後のスープの量と比較していない場合を挙げている。
 学習指導に当たっては、「『10人分のスープの量は2リットルで、30人に必要なスープの量は6リットルだから、分けることはできますが、残ります』のような、比較する対象が不明確な説明を基に、説明して何が不足しているかについて考え、課題に応じた説明へと洗練する活動を取り入れることが考えられる」と指摘する。
 同様に、中学校の国語Bでは、複数の資料から要旨を捉える力、伝えたい事実や事柄を明確にして説明する力などが弱いことが浮き彫りになっている。
 数学Bでは、二等辺三角形の一辺に置いた2地点と頂点の1つと結んだ線の長さが同じであることを証明すること、三角形の角度を求めることなどを問うた。特に、与えられた条件から角を求める設問の正答率は24・4%と低い。「与えられた証明の方針に基づくのではなく、自ら構想を立てて証明することについて問うのは、今回が初めて」という難度の高い問題だったのかもしれない。ただし、数学A問題で同じ図形を使い、証明のための構想や方針の必要性と意味を理解しているかを聞いた問題の正答率は、76・4%と高い。
 一つ一つの設問の正答・誤答を見ていくことで、学習していくときに気を付けなければならない点、指導に際しての配慮点などが見えてくる。
 平均正答率の底上げの努力は今後も必要だ。さらに、調査結果の分析では、学習上つまずく点なども明確に示されており、日常の授業に取り入れるなど、でひと工夫してみたい。