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  ホーム 学校授業のスパイス 「アイテム」企画特集 連動企画 日本教育新聞 2015/01/26付 連動企画vol.3  

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「アイテム」企画特集 連動企画


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学校全体、同じ気持ちで取り組む!(群馬県太田市立 沢野中央小学校)

 日本教育新聞「アイテム」企画特集との連動取材Vol.3は、群馬県太田市立沢野中央小学校からお届けします。同校は、子どもたちの学力向上にと、教科担任制を取り入れられています。そこにおける指導のあり方と、昨年(2013年)から導入された「アイテム」について、川上みさい校長先生にお話しいただきました。また、取材当日、拝見させていただいた5年1組の算数授業、また、日々の授業での子どもたちへの視点について、授業者である中島智教諭に併せてお話しいただいております。

日本教育新聞企画特集(2015年1月26日付)“学校独自で教科担任制を採用”
併せてお読みください。


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教科担任制の導入

川上校長: 群馬県では、教科担任制を推進しているということもあり、実は、本校では、全てを専科にしました。

思い切ったことをされたのですね。

川上校長: 教科担任制について保護者や子どもがどのような受け止め方をしているかということなのですが、90パーセント以上の子が、専科になったことを受け入れているのです。保護者も90パーセント以上が肯定的な評価をしてくれています。先生方は、時間のやりくりなど、大変です。今まで、小学校は、基本は、担任が持つという考え方でやってきています。しかし、いろいろなクラスに出なければならないとか、自分のクラスの子のことも、今までよりは関わりが薄れるので、理解がなかなか難しいとかとあると思うのですが、どうにかやっております。
 専門性が高い先生に授業を持ってもらうというのは、お互いにいいのかなと思います。また、教科の持つ数が少なくなることで、教材研究を進めるゆとりが出てくることも期待できます。

大きな改革かと思います。

川上校長: もう、やるのであれば、思い切ってやったほうがいいかなと思いました。教員は、1時間の授業を大切に思い、授業に責任を持つという意識が、以前よりは増しているのだと思います。授業の質は高まっていると思いますし、今後も期待したいです。自分のクラスではなくて、他のクラスも教えるわけですから、その点では、やはり、責任が大きいですよね。意識としては、そのようなことは、それぞれの先生が持ってくれているのではないかなとは思っています。子どもも、また、緊張感もあるのではないですか。
 当然、課題はいろいろあります。しかし、どちらかというと、良いほうの効果が高いと思っています。基本は、職員が頑張ってくれているから。もう、それしかないのです。基本は先生なんです。

事前の先生がたの準備も、もちろん必要ですし、同時に、子どもたちも、やはり事前にきちんと準備をしておかないといけないという、いい意味でのお互いの緊張が生まれることにはつながりますよね。

川上校長: 授業ですが、私も自分が小学校の担任をしているときは、終わらなかったら、休み時間もだらだらとやってしまうというのはありました。しかし、教科担任制ですと、子どもが移動しなければなりません。基本的にはチャイムとともに先生がたは授業を終わりにするという意識は持ってくれていると思います。当然、チャイムで始めるのです。それは、1年間を考えると、すごく重要なことなのかなと思います。

そのような意味では、規律は育ちますよね。

 

算数専科授業を拝見して

川上校長: (中島智教諭は)当校の算数専科で、4年、5年を担当しています。当校は教員を加配していただいております。担任を持っていない分、算数の専科を任せています。

中島先生: お世話になります。本日は、ありがとうございます。

「やはり考える力をつけたい」というのは、多分、中島先生の授業を拝見すると、なるべく児童に自発的な発言・思考を促しているようです。言葉のキャッチボールがとても多く思えます。また、子どもたちの『つぶやき』も丁寧に拾ってあげるということを、かなり考慮されているように思いました。挙手・じゃんけんなどの手法も1 時間の中で細かく使って授業をされているように拝見しました。

中島先生: そうですね。なるべく子どもを参加させるように意識しています。隣同士や、主に高学年が多いのですが、グループでの話し合いなど。「どうやると、今までに習ったような公式が見えてくるだろう」といったケースは、グループでの相談に導いたりして、問題解決に向けては教師の一方通行にならないように意識しています。

川上校長: 4年と5年の算数をどうにかしなければと考えていました。カリキュラム内容を見ると、6年生は学年の後半の復習が多くなります。でも、4,5年は子どもたちにとって、算数が好きになるのか、嫌いになるかの分かれ道になると思っています。特に、4年生の2学期の二位数でわる割り算が、人生最大の難関のところかなと思っています。「人生最大」と言うと、とても大げさなのですが、しかし、二位数でわる割り算ができないと、算数が、その後に苦しくなるかなというのが、自分の経験からあるのです。4年、5年の算数に専科を配置しました。

中島先生は、専科は初めてですか。

中島先生: このような形は初めてです。

川上校長: 彼にも戸惑いはあったと思いますが、改善を図るには専任を置くことであろうと考えました。担任が2クラスを同じ時間に合わせて三つに分けるなど、今までのものでは、なかなか改善が図れないと思い、少し違う形で進めていきたいというのは、ずっと考えていました。

中島先生: 例えば、4〜5年で算数を持たせてもらって、つながりが今まで以上に見えるようにはなりましたね。今日の授業も、「実は、4年生の下の教科書のこの辺でやってあります」と言えるのです。そうすると、子どもたちも「本当だ。やってある!」などと反応します。本当は前後を見るといいのでしょうが、同じ学年で、他教科もやっていると、なかなか手が回らない。算数だけだと、つながりが見えやすいのです。「3年でもやっていますね」などが言えるようになりました。

先生の中で、授業をされていて、大事だなと思われるようなことは、幾つかありますか。

中島先生: やはり、授業が一方通行にならないで、子どもたちにいろいろ発言してもらいたいとは思っています。発言しているうちに解決の糸口が見えたり、思い浮かばなかったことを発見したりということが大事だと考えています。
 他には、たどり着く道筋が違っても同じ答えが出てくることが分かり、且つそのような機会が増えていくと算数が面白いと感じてきます。算数は、答えが一つしかないみたいなイメージがありますが、いろいろな方法があるというのが分かれば、楽しく、好きになってくるのではないでしょうか。

授業は楽しいですか。

中島先生: はい、面白いです。ひとつの内容を同じように進めようと思っても、子どもが言うことも違うので、進み方が違います。やはり、同じ授業はないのだなと思います。2組の子は、「先生、あれ(平行四辺形)をもっと倒すと、面積はもっと違うの?」と言っていたのです。「では、もっと倒してみようね」と言って、2組は、では、もっと倒すほうまで進んで、最終的なまとめは、つぶれればつぶれるほど面積は小さくなるのだねというふうになりました。今日のまとまり方は、1組と2組で、少し違うのです。興味がいく方向が違ったりすると、そのようになります。

今日、授業を拝見していて、先生が子どもたち全員に対し目を配っていらっしゃったのをお見受けしました。それにより、子どもたちも意欲的になるという相乗効果が出ているなという印象を受けました。

中島先生: 1時間の中で、何かしらの発信は全員にしてもらいたいなと思っています。言葉やハンドサインなど。

雰囲気作りによる、子どもとの信頼関係が、そのようなことを可能にするのですね。

 

子どもの声を引き出す

川上校長: 中島先生は、子どもたちに「旅にいってごらん」という表現を使います。

中島先生: 分からない子が、席をぐるぐる回りながら、どんなことをやっているのかなとか。そういうのを見て来てくださいと。見ていると、ぱっと、思い付くこともあるだろうし、あるいは、じっと見ていると、「あ、そのようにやるんだ!」というふうに分かったりするようです。「旅に行ってごらん」と言うと、ふらふらっと行く子もいます。

川上校長: 基本的には、5、6年生は、知識欲はすごく旺盛だと思うのです。子どもは子どもなりに、何々君と僕は同じぐらいできるのかなとか、口にはあからさまには出さなくても思うのではないですか。その子は何を書いているのか見にいきたいとか、そういうのは当然あると思うのです。
 逆に、自分はそんなに勉強には自信がなかったのだけど、いわゆる、クラスの中で、あの子はよくできると思われているお子さんのノートを見たら、自分と同じだったではないかと。そうすると、それは自信になるようです。そういうとき、ニコッと笑顔がでたりします。
 それは、やはり、ただ手を挙げて発言をするではなくて、他のお友達のノートを見せてもらうとかということで、自信にもなると思います。さらに、自分はできると少し思っていた子のノートを見て、いや、これは、もう少し自分も頑張らなくてはいけないと思うこともあるでしょうし。そのような授業を、今、意識してやってくれているかなと思います。

子どもたちの声や話を引き出すのは、口で言うほど簡単なことではないと思うのですが、自然にできていたのは先生のキャラクターもあるでしょう。子どもたちの意欲というのも育っているのかなとは思いましたね。

川上校長: 私も経験していることですが、授業が終わったあと、子どもが寄って来てくれて一言言ってくれた時、子どもが少し考えてくれたのかなと思うのです。「今日は面白かった」「今日は頑張って考えられた」と感じてもらった時に、子どもたちが寄って来るのです。私共も授業の手応えを感じますし、子どもたちなりに手応えがあったのだろうと思います。
 あとは、研究授業の後など、「きょうの授業は意外と面白かったね」と言って、教室を出て行く子もいます。そのようなときは、やはり、子どもも考えた1時間だったのかなというふうには、私は思って見ています。

子どもが積極的に参加したという満足度は、その授業の後にいろいろ表れたりしますよね。

中島先生: (授業が)終わった後のほうが、本音がでますよね。

川上校長: 様子を見ている限りでは、関係のない話をしているのではなくて、授業の続きで行っているのだなとは、今日、あらためて思いました。

中島先生: そうですね。たまに、子どもの講義が始まったりします。「先生、ここはこうでしょう」とかと言いながら、黒板に書きながらやる子もいます。説明をし出す子も居いますよ。

なるほど。それは、すごくいいことですね。

中島先生: そうですね。終わった後だと、なかなか、言えない子も、言えたりするのです。「それは、授業中に言ってくれればよかったのに」とかということもあります。「では、明日、それを言ってください」とか言ったりします。

そこの思いを、しっかり受け止めることで、多分、次の授業でしゃべるかもしれないですよね。

川上校長: 先ほど、授業が楽しいと言っていたのが、そこかなと思います。やはり、教員が授業は楽しいと思っていると、それなりの準備も当然します。すると、手応えもあり、楽しいと思えると思います。
 私もそうでした。楽しいと思えるときは、子どもとの関係もいいし、次から次へと考えが出てくるのです。しかし、自分が子どもの前に行くのに足が重くなるというときもあるのです。そのようなときは、何をやってもうまくいかないし、どんどん自分の気持ちを押し込んでいくばかりです。

そうですね、先生も生身の人間なのですから。

川上校長: そうなのです。だから、授業をやっているのが楽しいと思ってやっているから、子どもにとっても、きっと楽しい授業になっているのだろうなと思います。

 

アイテムを導入して

アイテムを全校で導入されていますが、この経緯についてお話をお聞かせいただけますか。

川上校長: 私たちに期待されているのは、子どもの学力を向上させることと考えています。私自身も、学力を向上させなければならないという気持ちはあり、それが、アイテムを使わせていただく背景にもなっています。

どのような検討をした中でということだったのですか。

川上校長: まず見本を送っていただいて、運営委員会で各職員に見てもらい、「こうした教材を使っていきたいけど、どうでしょうか?」という確認をしました。年度途中の採用で価格のこともあります。職員からは「保護者への説明方法をどうするのか」や「未消化部分が多くでるのでは」などの意見も出ました。

使用開始時期はいつ頃でしたか。

川上校長: 平成25年の10月からです。

アイテムは、導入された後、すぐに、朝の学習の時間でお使いになったとお聞きしましたが。

川上校長: はい。すぐに使い始めました。平成26年度は、金曜日の朝にやっています。15分ほどを利用し、10分で解き5分で採点といった感じです。各担任に任せてしまうというのも一つの方 法ですが、教員間の経験の違いがあります。学校で取り入れると決めたので、時間を決めるて活用するということは、私がお願いしました。昨年度は20分でしたが、今年度は15分の配分としました。これは全校共通です。
 平成25年度は、年度の途中からの導入でしたので、先生方それぞれの考えで使いました。宿題に出す学年もありましたし、学校でほとんどやる学年もありました。丸付けも、子どもにやらせる学年もあるし、教員が丸を付ける学年もありました。

中島先生: そうですね、あとは、やり方がいろいろあるのです。例えば、もともと算数が苦手な子の場合は、例えば、1問やったらその都度、解答を確認していいよというのもあります。問題を1問やったら確認をして、丸だったら次に進むし、そこが間違っていたら、「もう一回それを考えてごらん」とかというような。1問やって丸付け、1問やって丸付けというような方法も、5年生ではやっていたりもしますね。

先生が入ってあげて、見てあげるみたいな感じですか。

中島先生: そうですね。机間指導をしながら。あとは、分からなかったら手を上げて、「ここだよ」と教えたりもします。早い子は演習も進み、自分で採点もしています。苦手な子は、マイペースです。

子どもたちにとってもやりがいがあるということでしょうか。

中島先生: ありますね。特に、できる子は、難問を解くのが楽しそうです。やはり、教科書レベルだと、自分の気持ちを満たしてくれる問題が少ないです。今までは、すらすら解けていたのに、解けない問題があったりすると、悔しいとかという気持ちが出てくるようです。

先生ご自身としては、アイテムでの手応えを感じていらっしゃいますか。

中島先生: はい。大人でも、難しい問題がありますよね。試しに、今の5年生に3年アイテムの難しいところをやらせても手応えがあります。子どもたちも、やはり、3年生というと、結構、悔しいみたいです。「うーん!」となるので。いろいろな学年のいろいろな難しい問題をやるのも、子どもたちは楽しいみたいですね。5年の問題で躓いても、今回できなくても、6年になったら、もう一回やってごらんとも言っていたりします。

自分から背伸びをしたというか、難易度の高い問題をやるというのは、割と、刺激としては、すごくいいということですか。

中島先生: そうですね。アイテムのステップ3(活用問題)とか、ステップ4(探究問題)は、子どもたちに「できなくて当たり前」、「できたら、すごいんだよ!」と伝えています。ここは、「できなくても普通なんだよ」と言ってあります。「ステップ1(導入)やステップ2(習得問題)ぐらいまではできるといいね」という話です。苦手な子には、ステップ3,4には踏み込まなくてもいいように言ってあります。

川上校長: 「活用力」とよくいわれていますが、活用力を育む問題というのが、このような形のものだというのを、私たち自身も少し意識できるようになったと思います。全国学力・学習状況調査を当校では、それぞれの学年に配布して見てもらっていますが、例えば、1年生の段階で活用力を育むためには、と。このような思考をさせていくことが大切だと思います。
 活用力は、もちろん、表現力であったり、判断力であったり、思考力であったりというのは、私たちも意識しているのです。ただ、一体、どのような問題、教科書レベルだと、そこまではなかなか活用力を育む問題というのが出ているかといったら、やはり基礎基本のレベルなのかなとは思うのです。やはり、私たちも問題を見てみたり、解いてみたりもします。先ほどの中島先生ではないですが、大人が解いても難しいとか。そのような感覚を持てるようになってきているかなというふうには思います。

すごく大事なことですよね。先生がたにとっても、いい教材との出会いみたいなものが、その先生の力を高めていくということなのですね。

川上校長: 子どもたちにどのようなものを与えればいいのだろうか、また、どういうところで何を考えさせればいいのかは、今も手探りのところでもあります。文部科学省から出ている解説書を読んでも、言葉だけではなかなか理解できないところがあるのですが、今回のように、ステップ3,4(アイテムにある活用、探究問題)を見たり、全国学力・学習状況調査のB問題を見て、私たちも理解を深めていると思います。

アイテムを使い始めて、全国学力・学習状況調査の結果など、何か変化がありましたか。

川上校長: 今年は、去年よりはよくなっています。一つは、活用力の問題を経験することで慣れてきた、あるいは、少し手ごわい問題に向かっていこうとする、子どもの気持ちも養われたと思っています。
 振り返ってみると、教科担任制を含めて強力な改革だったと思います。私のわがままで進めたようなもので、先生方も大変だったでしょう。学校全体で、みんなが同じ気持ちで取り組んでくれているというところが一番大きいのだと思います。それがないと、なかなか、学力の向上とか、あるいは、思考をする場面とかというのを育てていくのは厳しいかなと思います。

貴重なお話を聞かせていただきました。本日は、有難うございました。