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  ホーム 学校授業のスパイス 「アイテム」企画特集 連動企画 日本教育新聞 2014/01/27付 連動企画vol.2  

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「アイテム」企画特集 連動企画

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あきらめない姿勢を育てる 〜既習事項の活用で難問に挑戦〜(群馬県太田市立 韮川西小学校)

 日本教育新聞・企画特集(1月27日号)連動取材の第2弾は、群馬県太田市立韮川西小学校(田島隆文校長)です。
 韮川西小学校では今年度より「アイテム」算数を学校導入。導入に至るきっかけの一つとして、前任校にて6年に渡って「アイテム」算数を活用し、今年度から本校に赴任された森かず子先生の存在がありました。本稿では導入に至る経緯や、前任校でのご経験も含めた本校での具体的活用法や成果などを中心に、田島隆文校長と森先生よりお話をいただきました。

日本教育新聞企画特集(2014年1月27日付)“考える力と活用力を伸ばす算数教育へ”をご参考ください。


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あきらめない姿勢を育てる 〜既習事項の活用で難問に挑戦〜

「アイテム」導入の経緯

まずは「アイテム算数」導入の経緯についてお聞かせください。

田島隆文校長(以下校長) − 「アイテム」算数は今年度の4月より全校にて活用しています。「アイテム」自体は知っていて、以前に紹介を受けたことがありました。その中で、前任校において「アイテム」の活用を含め経験豊富な森先生が、今年度にタイミングよく異動で本校に赴任されました。森先生からも是非やりたいという申し出をもらっていたので、これを契機にと思い導入を決めました。

森かず子先生(以下森先生) − 前任校では6年に渡って活用していまして、算数は「アイテム」使って当たり前という日々を送ってきました。それを通じて子どものすごさを実感していましたので、本校でも、という思いはありましたね。

校長 − 教材の内容としてもとても良いものですから、これまで使用していた市販の教材と比べましても、様々な使い道があるだろうと思っています。

 

みんなで「わかる楽しさ」を共有する

「すごさ」とは具体的にどういったものでしょうか。

森先生 − 「算数コンテスト」や「計算コンテスト」を行っている学校は多いと思います。前任校でもあったのですが、その問題は「アイテム」から出題していました。それも、3,4ステップ目の活用・探究のページからの出題で、特に難しい問題です。子どもには予め出題範囲を指示しておいて、コンテストに向けて毎日取り組ませます。そしてコンテストについては、どの子も90点を取れるまで何度もやり直しをさせます。そうすると子どもは本当に一生懸命になって、分からないと聞きにくるし、友達同士教え合うし、できなかったものは何回でもやり直すので、そのうちに分かる楽しさをみんなで共有するようになるんです。

通常、難しいものに取り組むとなると、やる気のある子どもとそうではない子で、意欲に差が出てくるように思うのですが…

森先生 − それが逆なんですね。難しいことをやると、最初はできるのが一部の子かもしれませんが、その子の説明を聞いていて、今までできなかった子が「ああ、そうか」と言ってできるようになります。分からない子に分かる子がよく教えるんですね。しかも、休み時間や、放課後の時間、または朝登校してから、「分からないから○○ちゃんに教えてもらった!」というように、授業以外の場面で学び合いをしているんです。それでも分からないと、職員室まで質問に来るようになりました。

それは自然とそういう流れになったのですか?

森先生 − はい、自然と。最も難しいところから出題していくわけですから、100点取れるような子は最初はほとんど居ませんが、夏休み明けには90点以上取れる子が半分以上になります。本校では今年度からスタートで、このような難しい問題にほとんど触れたことがないので、夏休み明けまでの短い期間ではそこまで到達できませんでしたが。

 

継続することで

「何度もやり直しを」と仰いましたが、間違えた問題を何度もできるまで繰り返すのですか? 何度も解答を見ることになると思いますが。

森先生 − 丸つけをして分からなかったら、解答を読ませ、写させます。そのまま写すことも勉強です。そのようにして、単元が終わる度に4ステップ全てを消化させます。夏休みは宿題として、1学期範囲をもう一度全て取り組ませます。冬休みは1、2学期範囲全てが宿題です。ですから、それまでは当然直接書き込みではなく、ノートを使って取り組ませています。そして3学期になって初めて書き込みをさせるんですね。つまり、最低でも5回は解くことになります。これだけの良いものを、一度解いただけで終わらせてしますのはすごくもったいないことだと思うんです。

「良いもの」というのは具体的にはどのようなことですか?

校長 − 基礎・基本から、思考力・活用力を問う難しい問題まで、バランスよく作られていますね。

森先生 − これらの問題は、市販のドリルですとか、書店で売られている問題集の中にはなかなかないんです。特に3ステップ目(活用)と4ステップ目(探究)にあるような問題ですね。自身で作問しようと10年程前に取り組んでみたことがありますが、なかなか難しく挫折してしまいました。

校長 − 子どもに合わせた使い方もできます。

森先生 − そうですね。基礎・基本の計算問題も手軽にできるようになっていますので。

校長 − 導入初年度から学校全体での採択ですから、全ての学年・クラスで森先生と同じような使い方をできていないところもありますが、これを進めることによって、教職員のレベルが上がりますし、子どもたちにもいいチャンスになります。特に私が一番言っているのは、3,4ステップ目の問題のことです。ちょっと難しい問題をやらせるというのは、子どもにとっても大きな刺激になりますから。クラスによっては難しくて投げてしまう子もいると思います。でもそれが、何年も継続してやることによって力になっていきます。

 

教職員の理解のために

導入初年度から学校全体での採択というのは、事前の周りのご理解という点で苦労なされたのではないでしょうか?

校長 − 冒頭で以前から「アイテム」のことは知っていたとお話しましたが、本校の教員も何人[文書の重要な部分を引用して読者の注意を引いたり、このスペースを使って注目ポイントを強調したりしましょう。このテキスト ボックスは、ドラッグしてページ上の好きな場所に配置できます。]
か、筑波大学附属小学校の研究会に参加したことがありまして、やはり以前より情報を得てきていました。

森先生 − 前任校で私が初めて「アイテム」と出会ったときのような反発はなかったですね。私自身は、初めて見たときに「これはできるわけがない」と思って、当時の校長先生に3回ぐらい「これは無理です」って言ったぐらいでしたから(笑)。本校の先生方はそういったことはありませんでした。

校長 − 毎年筑波大付属小の先生方に来ていただいて、いろいろ勉強もしていますから、そういった部分でも、教職員の意識は高いかもしれません。森先生も事前に何度か他の先生方に、「こういう使い方があるよ」という説明をしていました。

他のご採択校でも良く聞くお話ですが、やはり先生方への事前の周知というのは必要ですよね。

校長 − そうですね。それがないとできないと思います。

時期としてはいつ頃行っていたのでしょうか?

森先生 − 1回目は始業式の前の、4月の第1週の職員会議でした。教材見本は事前に入手していましたし、本校の教員のお子さんのひとりが、たまたま私の前任校において6年間「アイテム」を使っていたということもあって、実際子どもが使用した実物も全教職員に見てもらうことができました。4月はそれも含めて2回説明会を行いました。あとは普段の会話の中で伝えることもありましたね。

具体的にはどういったお話をされていましたか?

森先生 − 前任校での活用事例を含めた、「アイテム」の具体的な使い方ですね。「低学年は保護者にマルをつけてもらっていた」ですとか、「高学年は自分自身でマルつけまでやらせていた」とかいったことです。ちょっと話がそれますが、自分でマルつけをさせると、その子の勉強の仕方もチェックできるんです。ノートに式と答えだけ書いて、途中計算が全くないような子がいると、これはそのまま答え写してきたなってなりますよね。そういった子には、「そんな勉強の仕方をしたって力にはならないんだよ」って指導をします。

 

勉強の仕方を理解させる

全く解き方が分からない子がそういったことをすると思いますが、どのように改善させるのですか?

森先生 − 「アイテム」の解答は、計算過程も含めて丁寧に解説されています。ですから、できなければその過程も含めて全て写せばいいと伝えます。写してみて、その後実際自分で解いてみなさいということです。子どもたちは意外とそういった細かい勉強の仕方は、教わっていないことが多いように思います。中学校になると相応の自学自習力が必要になりますが、こういった細かな勉強の仕方の身についていない子が、それができずに授業についていけなくなっているような気がします。ですので、5年生あたりからそういった勉強の仕方も教えていくんですね。「頭がいい悪いではなくて、勉強の仕方の上手下手だよ」ということです。「問題が解けない、分からないのは、今までの勉強の仕方がちょっとうまくいかなかっただけだから、そのやり方を教えるね」って伝えて、指導をしています。式と答えだけを写す子はほとんどいなくなりましたね。

勉強の仕方という点においては、他教科においても活かせる部分が多々あると思いますが、それも含めてアイテムでの指導を通じて、他教科でも学ぶ姿勢が変わってきたということはあるのでしょうか。

校長 − 「アイテム」だけかどうかは分かりませんが、一生懸命考える力といいましょうか、考えて答えたり、考えて行動したりする力を子どもたちに身につけさせるということは、先生方が常に意識してやっていることです。「アイテム」はその中の具体的方策のひとつでもありますから、総体的に変わってきているということはあると思います。

森先生 − 私は他教科をみていないのでわかりませんが、確実にこれをやっていく、そしてできるようになってくると、各担任の先生は「国語も変わってきた」って言いますね。これをやって自信を持った子は、国語のときもよく発言するようになると。これを一生懸命やっている子は、結局1点伸びればその周辺の様々な力も一緒に伸びていくということです。

校長 − そうですね。特に活用や探究の問題を楽しめるようになってくると、国語でも理科でもそういった面が伸びてきています。

森先生 − 「算数が楽しくなる」「できるのが楽しい」って子どもたちは言います。

校長 − もともと子どもたちには「勉強ができるようになりたい」っていう欲求がありますから、そこに刺激としてこういったものを与えてあげれば意欲は出てくるんです。算数で言えば、子どもが単純に計算だけやっていて、そういう勉強でいいんだって思っていたところに、先生からもう少しレベルの高い考えさせる問題をうまく与えると、子どもは挑戦してきますよね。

森先生 − もちろん「アイテム」だけでということではなく、やはり授業も面白くて考えさせるような工夫を常に続けています。今手元に子どものアンケートがあるのですが、「わたしは授業中いつもボーっとしていて、あーあ、つまんないなとか、早く休み時間になんないかなとずっとそう思っていました。でも、5年生になってその逆になりました。5年生になると、あー、算数の時間がどんどん過ぎちゃうって思います。」って書いているような子もいるんです。それから毎日学校でちゃんとやっていると、「アイテム」をやるのが楽になってきたっていう子もいましたね。

校長 − 私が見てもやはりこういう活用の問題やチャレンジの問題は、本当に面白いと思いますからね。

森先生 − そうですよね。

 

B問題への対応として

授業の場面においては、どのようにアイテムを活用されていますか?

森先生 − 授業は正直なところ教科書で精一杯ですが、1単元が終わったところで「アイテム」という流れが一般的です。あるクラスはちょうど明日教科書の練習問題をすると1単元を終えるので、明日の宿題は「アイテム」です。それで、土日にアイテムの3,4ステップ目をやらせて、月曜日に単元テストをします。単元テストも実は非常に難しい市販テストを使ってやっています。そのテストは言葉で説明する問題があるんです。標準レベルの市販テストでいつも100点取っている子でも、最初は20点程度しか取れないようなものですね。

そんなに難しいんですね…

森先生 − でも、「アイテム」やっておけば大丈夫なんです。「アイテム」のチャレンジレベルをやっておけば、しっかり対応できます。

校長 − 森先生がまだ前任校にいた頃に、大学の先生をお呼びして模擬授業をしたことがありました。私もそこに参加したんですが、子どもたちは「考える」「表現する」っていう部分が非常に豊かでした。

森先生 − 全国学力状況調査のB問題にしましても、まずは問題の文章をきちんと理解して、筋道立てて考えて、それを書いて表現するわけですよね。「アイテム」の活用問題もそうでないと解けないんです。これらを解けない子というのは、問題を読んでいる途中からもう嫌だってなってしまっているんだと思います。

校長 − B問題については、無解答が多いという結果が出ているような県もありますよね。

森先生 − もう難しいって初めから諦めてしまっていると思うんです。読んでいてよく分からない。

校長 − 普段から自分で解き進めようとする姿勢を訓練できていない子には難しいのでしょう。自分で考えようとする前から「もう分からない!どうしらいい?先生教えて!」ってなってしまいます。

森先生 − 本校の子どもたちは、普段から「アイテム」の活用問題等で、「習ったことをどう使おうかな」って思いながらやっているので、問題読んで多少分からなくても、どうにか習ったことを使おうとしています。ですから最近はもうあまりそういう言葉を聞かなくなりましたね。

 

既習事項を振り返る

アイテムとは別に、授業で心掛けていらっしゃることはありますか?

森先生 − まずはとにかく全員参加。全員です。手を挙げるのも全員。1人でも手を挙げていないとその子が分かるまで教えます。その子が分からないまま他の誰かを指して進んでいくということはしません。

ではその点はじっくり進めていかれているんですね。

森先生 − いえ、じっくりではないです。テンポは速いです。みんなで引っ張っていくイメージですね。例えば、その子が分からなかったら、誰かがヒントを出してあげるとか。それで、その子が「ああ」って分かる。そうでないと、一回の授業でもできる子とできない子で大きな差ができて、できない子はそのまま分からなくなってしまいます。

校長 − テンポの良さもありますが、特に森先生が気をつけているのは、常に既習事項をどういうふうに生かすかということですね。テンポを良く、分かるようにするには、他の子のヒントっていうのも大変重要だから、そこの学び合いです。集団の中での学びっていうのを意識しているんではないかと私は見ています。

森先生 − それから見方、考え方を教えています。授業の最初は昨日とどこが違ったかという着眼の仕方ですとか、いっぱい考えが出たら、似ているところ、違うというところ、一体どれが簡単なのかなということです。説明するには、昨日習ったことやさっき習ったことを使えば、ちゃんとできるようになっているんだよって。そのためにノートをちゃんと書いている。振り返れるように。ですから子どもたちは、自分のノート見れば説明も簡単です。

アイテムのステップを進めていく構成となんとなく似ていますね。

森先生 − そうですよね。だんだん難しくなっていく事柄を、既習事項を使って解いていくようなところとか。自然な流れですね。そういう意味でも良問が凝縮されていると思います。あとはもう一方で「できる子をもっと伸ばす」っていうこともできます。できない子に焦点をあてがちですが、できる子にも焦点を当ててその子を伸ばすということです。「アイテム」にはその子たちに対応できる問題が沢山ありますから。

校長 − できる子に限らず、ある程度高い目標を設定してそこに向かってやると、できない子も上がっていくんですよね。どちらかというと一般的に先生方は、できない子に合わせてレベルを下げてやっている。そうすると、できる子はもうつまんなくなってしまうし、できない子もそのレベルで終わってしまうんですね。

森先生 − 筑波大学付属小算数研究部の田中先生もそう仰っていましたよね。みんなに10の力をつけさせたいなら、12ぐらい与えればいいと。でも、できない子に合わせて8にしてしまうから、結局みんな7ぐらいしかできないって。でも、校長がお話したように、一般的には後者の考えの方が多いですよね。この子たちは難しい問題はできないから、簡単なものをじっくりやりましょうと。

校長 − でも先ほどもお話しましたけども、子どもってちょっと難しいぐらいのほうが意欲、挑戦心が湧くものだと思うんです。大人だってそうですよね。これは少し難しいよってふられると、ちょっとやってみようかってなるじゃないですか。

森先生 − そういった意味でも、校長先生をはじめ周りの先生方にご理解いただいて、本校でも「アイテム」を導入できたことは本当に良かったと思います。

校長 − 森先生の前任校に比べれば、効果的な活用はまだまだかもしれませんが、森先生の経験もうまく取り入れながら、より効果的に取り組んでいければ良いと思います。


 


この度の取材におきまして、ご理解、ご協力をいただきましたことを厚くお礼申しあげます。